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ちょっと帰る前に寄り道していい?廉にそう言われ花音はバスに揺られている。
ブルーの本体に白いラインが2本入ったバスは昔と変わらずブルブルと音を鳴らして走る。
廉は目的地に着き花音を伴いバスを降りる。
ザッザッザッ。
花音と2人浜辺に降り立つ。
もうすぐ冬の訪れを感じさせる季節の海は、透き通るような寒さを感じる。
吸い込む息さえ澄んでいるような。
廉は自分が巻いてるストールを細い花音の首にグルグル巻きつける。
ククっ。
『え?何で笑うの?廉君が巻いたのに』花音は頬を膨らませる。
花音の顔は小さすぎてストールに埋もれている。
そんな姿も愛おしくて廉はそっと花音を抱き寄せる。壊れないように。そっと。
『花音、ずっと言いたい事あるんだけど聞いてもらえる?』廉は少し体を離して花音の目を覗き込む。
花音の顔は真っ赤になってて、それもまた可愛らしい。
コクっと花音が頷いたのを確認して、廉は花音を再び抱き寄せた。
『あのね、俺、花音が居なくなってすごく辛かったし悲しかった。自分がね花音を探す事さえできない事が悔しかった。
だから、あの時、約束した言葉をもう一度伝えてもいい?』
廉は体をそっと離し体を屈めて花音の顔を真っ直ぐ見る。花音の目には涙が溢れそうになっている。
『何かあったら俺が必ず側に行く。だから何かある時は俺に言って。絶対側にいるから。
だから、花音の側に一生居させて欲しい』
花音は、溢れる涙を堪える事が出来ずにただ頷く。自分もずっと側に居たいと。もう離れたくないと廉の胸にそっと頭を預ける。
静かな海に赤く染まった太陽が傾き沈んでいく。
海の色も薄っすら赤く染まる。
廉はそっと花音の額にキスをしそのまま自分の額を花音の額にくっつけた。
そのまま互いに目を合わせて笑いあう。
2人が寄り添い合う姿に幼い頃の2人がリンクする。
変わらない笑顔の2人がそこにいた。
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