出会い

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『緑川さん、大丈夫そう?』 教室に戻るとすでに朝のHRは終わっていて、1限目の音楽教室に移動しようとしていた和希と出くわした。 『たぶん。』廉は歯切れ悪く答える。 『転校したてで緊張もあるし、ストレスとかもあったんじゃないかな』 『柳田と同じ言葉だな。さすが未来のお医者様』 『まだ医者になるとは決めてないよ』ふっと和希が含み笑いをする。 榊家と言えば、廉達が暮らす田舎町で一際(ひときわ)大きい総合病院を構えている。 和希はそこの長男だ。故に進むべき道は決められているようなものだ。本人が希望するかどうかは関係なく。 『それより、廉。(たちばな)達の事もあるから緑川さんの事気をつけろよ。』 『何を?橘が何の関係あるんだよ?』 『前にお前と一緒に帰った女の子いただろ?橘達から嫌がらせされてしばらく学校来なくなったの忘れたのか?』 一緒に帰ったわけではなく、隣にいて一方的に話かけていたのを周りが勘違いしただけだ。 『橘とかどうでもいいわ。』心底うんざりしながら廉は言う。 『とにかく、緑川さんは転校してきたばかりで心細いだろうから巻き込むなよ色々と』 緑川を心配しているのか語尾がいつもより強い和希の言葉に、廉は違和感を覚える。 『分かった。気をつける。』 『とりあえず、次音楽だから移動するぞ』 和希は教室の入り口で廉を待っている。 廉は移動するため教科書を取り和希の方へ足早に向かった。
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