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不穏な空気
あの時から廉は花音と少しずつ話すようになった。
花音は転校が多く廉達の学校が3回目である事。
海を見たことがなかったので、この街に来れて嬉しい事。
そして、生まれつき体が少し弱い事。
『普通に生活できてるから、いつもは自分の体の事忘れちゃうの。』花音は明るく言う。
『でも、緑川は勉強できるからすごいよ。俺は全くダメだから。』
『だって授業中寝てるだもん紫悠君。先生が怒っても起きないし。』ふふっと花音は笑う。
『寝たらなかなか起きないから俺。いっつも和希に真面目にしろって怒られてんだよ。』
花音の隣で和希が大袈裟に首を縦に振る。
『スポーツの熱を少しでも勉学に回せばいいんだけどね。元は悪くないんだからさ。』
ため息をつきながら和希が言う。
『無理。睡眠大事。』
『寝る子は育つって言うけど、また身長伸びたんじゃない廉?』
『私も身長欲しい。いいなー』
花音は羨ましいそうな目で廉を見つめている。
『俺は2人の脳を少しもらいたいよ』
アッハハ!!
3人の笑い声が教室にひびく。
『転校生、廉君と委員長と仲良さげだよね。』『いいなー。なかなか2人と話なんかできないのにー』『悔しいー』
教室の端で女の子達がヒソヒソ話をしながら廉達を見ている。
『ちょっと馴れ馴れしいんじゃないかしら。』
橘が腕を組みながら言う。
『緑川さんには、教えておいた方がいいかもね。廉君達はみんなのもの。だって』
橘は鋭い目つきで花音の方を向く。
『芽衣ちゃん。気持ちは分かるけど前の時みたいに女の子が不登校になったりしたらヤバイよ。』
『そうだよ。やめた方が良くない?』
『何よ。いいわよ別に。友達だと思ってたけど違ったようね。』
切り離すようないい方に、周りの子達が慌てて弁解を始める。『そうだね。これ以上はね。』『みんなも廉君達と話したいしね』
橘の顔色を伺いつつ同調する。
よそ者は、よそ者って事を分からせなきゃね。
クスっと笑いながら橘は席に着いた。
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