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「身近な仕事」柳田が黒板に書いていく。
『えー身近な仕事と題して、調べてきて発表してもらいます。様々な職種があると思いますが身近な人を題材にする事。』
『どんな仕事で、大変な事とか何故その仕事を選んだのか、やりがいを感じる点などをまとめて提出してもらいます』
『えー親の仕事を聞けって事ですか?』
『親御さんや親戚、もちろん兄弟姉妹で既に仕事をしてる場合はそれでもいい。』
来週月曜日が期限だぞー。そう言って柳田は教室を去って行った。
愛に頼むかな。
廉は母とは出来るだけ接点を持たないようにしてきた。今更、どうやって話かければいかも分からない。
『ねぇ、緑川さんのお父様って何してるの?』
橘が花音に近づき問いかける。
『えっと。。。』
花音は答えられずに目を伏せる。
『うちのお父様が言ってたの。うちが管理してるアパートに新しく入った住人がいて、たぶん子供はうちの小学校だって』
『旭コーポ、緑川さん家だよね?』
『。。。。』
『でも、父親は家からめったに出ないのか見た事ないって。』
『あなたのお父様って仕事してないの?』
『えー緑川さんのお父さんって無職?』
『何で仕事してないの?』
橘の周りの子達が捲し立てる。
『今は。。。。今はお休み中だから』
小さな声で花音は応える。
『じゃあ、お母様がお仕事を頑張ってらっしゃるのね。大変ね、緑川さん。』
わざと教室中に聞こえるように橘は高めの声で話す。
『えっと、、、、』
花音は何も言い返せずに口を紡ぐ。
周りの視線が集まる。
思わず目を閉じて両手を握りしめる。
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