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出会い
『転校生が来るらしいよ』
朝のざわついた教室。
子供達の高めの体温で教室の温度がさらに1℃上がったように感じる。
その情報を自慢げに話す橘芽衣が、廉の近くにバタバタと走ってくる。
『廉君、転校生は女の子らしいよ?』
やたら至近距離で話す彼女にイラつきながら
紫悠 廉は『へぇ』と一言で話を切った。
やたらベタベタ絡んでくる橘の視線を遮るため気怠い頭を机に置く。
『今日もダルそうだな』
頭上から声をかけられ頭を上げると、自分同様冷めた顔の友人、榊和希がいた。
『朝から騒ぐ内容でもないだろ』
『転校生は今の時期珍しいからじゃないか?』
『確かに5月に転校は珍しいな。どうでもいいけど』
廉達が通う南部小学校は、海沿いの田舎町ゆえに全校生徒は300名にも満たない小さな学校だ。
田舎特有の閉鎖的な空気と密な感じが身にまとう環境のせいか廉は周りに関心をもたないようにしてきた。
どこにいても何をしても周りに見られているようで息が詰まる。
いつもダルそうにしている廉を気にかけてるのか、はたまた自分も似たような感じなのか和希はいつも廉の近くにいる。
『芽衣より可愛い子だと嫌だな〜』
『芽衣ちゃんより可愛い子なんていないよ!』
いつものように橘 芽衣は何かと周りを巻き込んで騒ぎ立てている。
親が田舎町で大きな不動産屋をしている橘は、常に自分が上でないと気がすまない性格で周りの取り巻きも彼女を持ち上げるのに必死だ。
『和希君も可愛い子がいいよね?』
蓮の反応が鈍いため、橘は和希に視線を変えて反応を見ている。
『顔関係ある?問題児じゃなければいいんじゃないかな』
こちらはこちらで、橘を見もせずに話をぶった切った。
『相変わらず2人ともクールだね』
よく分からないセリフを言い橘 芽衣は取り巻きグループに戻っていく。
機嫌を害した顔をしているのか、取り巻き達が橘の服装を褒め称える声が聞こえてくる。女王様はご機嫌ななめらしい。
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