不穏な空気

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『ガッシャーン!!』 花音の自宅であろう部屋の前に来ると、物が割れるすごい音がする。 『!!、!!!』 何かしら叫ぶ男の声がし、廉は部屋のドアを叩く。だか、反応がない。 インターホンを連打し、さらにドアを叩き続ける。 『緑川!大丈夫か!』 『緑川!』 そう何度も叫ぶ。 バンっ!! 勢いよく扉が開き、廉は体ごと扉にぶつかる。 つつっ。 右足に激痛を感じた。 避けきれなかったためか、足に違和感を感じる。 『うるさい!誰だ!!』 無精髭のボサボサ頭の男が玄関先で叫んでいる。目はうつろで焦点があっていない。だが、興奮しているのか顔全体は赤かった。 『どこのガキだ!』 そう言うと男は廉の胸ぐらを掴む。 思った以上に力はあるのか、廉は胸に圧迫感を感じ咳こむ。 『お父さん!やめて!』 男の後ろから声がする。 部屋の方に目線を伸ばすと花音がいた。 花音だ。 泣いている。 廉が花音の様子を見ている間も、父親である男は何かしら叫びながら腕の力を込めてくる。 『やめてよ!お父さん』 花音が廉を掴んでいる父親の腕を剥がそうとする。 バシンっ!ドン!! 男は、花音が掴んでいた腕を振り上げて離す。勢いがよすぎたのか花音が後ろに倒れた。 それを見た瞬間、 廉は体全体を使い男に足を蹴り上げる。 わずかに当たって男の体勢が崩れた。 『花音!逃げるぞ!』 廉は男の足の隙間を抜い、花音に手を伸ばす。 『花音!!』 花音は泣きながら廉の手を掴む。 廉は思い切り花音を引き寄せると、後ろを振り返らずに走る。 冷たい。 花音の手は冷え切っている。 そんな事を思いながら廉は花音と走った。
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