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『大丈夫か?』
花音の体調を心配し、アパートから少し離れた人気のない公園のベンチに腰を下ろす。
長くは走れない花音の様子を見ながら逃げたが、大丈夫だろうか。
廉はジッと彼女の様子を伺う。
『ごめんなさい。』
震える声で花音は言う。
『いつもあんなにひどくないの』
そう言葉を続ける。
『俺が大袈裟にしたからさ。お父さんも気に触ったかもだし、こっちこそ、ごめんな。』体は?きつくない?
廉は花音の様子を気にかける。
『違うっ!紫悠君は悪くないよ!私がうまく出来なかったから。だから。うぅっ。』
本当にごめんなさい。そう花音は何度も謝る。
『お母さんが最近体調悪くて、だからお米くらい炊いたらお母さんも楽かなって。でもお米こぼしちゃって。それがいけなかったの。私がダメだから。』
そんな事であの状態かよ。
花音はずっと自分が悪い。だから怒らせたんだと泣きながら言う。
『花音』
廉は花音の肩を両手で優しく掴み、顔を覗きこむ
『お母さんのためにやったんだろ?ダメじゃないよ。きっとお母さんは喜ぶよ。』
花音は泣き腫らした顔で廉を見る。
『だから、きっと大丈夫だよ』
自分はこんな事しか言ってやれない。
廉は自分が情けなかった。
『ありがとう。紫悠君。助けてくれて。ありがとう。』
泣きながら無理に笑顔を作り花音は言う。
廉はそっと花音の横に座り手を握る。
せめて手だけでも温めたい。
そう思ったから。
『紫悠君の手、温かくて大きくて安心する。』
花音はつぶやく。
『手くらいいつでも貸すよ。』
花音は嬉しそうに『ありがとう』と笑った。
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