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『ちょっとー何したらこんな足腫れるのよ』
愛が湿布をペシっと投げやりに貼りながら廉に言う。
『どうせ、無茶な体勢でシュートしたりしたんじゃないの?アンタ体だけが取り柄なんだからさー。』
もう少し自己管理しなよ。と小言をブツブツ言い続ける。
『廉、明日榊さんところに朝のうちに行くわよ。ヒビ入ってるかもしれないから。』
母の正子が食卓にご飯を並べながら言う。
『大丈夫。歩けるしバスで行けるから』
愛、湿布ありがと。今日は疲れたから休む。
そう言い、正子の方は見ずに廉は2階に上がった。
台所で母がため息をついてるような気がした。
『ヒビまではいってないけど、腫れが引かない間はスポーツは控えてね』
榊総合クリニックの整形外科の医師はメガネを直しながら伝える。
『今週、サッカーの試合あるんですがダメですか?』
『う〜ん。腫れが引かないとね。どうしてもって時はまた相談して。でも成長期の捻挫は舐めたらダメだよ廉君。』
また身長伸びた?そう笑いながら言う医師は和希の叔父の榊大和だ。
叔父と言ってもまだ20代のため廉や和希からしたらお兄さんみたいな存在だ。
『湿布はこまめに変えて、固定を外さない事。』
キツめに念を押されて診察を後にした。
『大和さん何だって?』
和希が診察室前の椅子に座っている。
『何でいんの?』
『愛さんから頼まれた。うちのバカチビが生意気に1人で行くだろうから宜しく頼みます。って』
バカチビってひどくねぇか?
『チビは違うけどバカは同意する。』
まだ小学生なんだから親に甘えろよ。和希は吐き捨てながら言う。
『今日、大事な会議あるって前から言ってたし、最近ようやく仕事に前向きになれた。みたいな事、携帯で話してるの聞いてたから。』
邪魔しないように。そう思って。
廉はひっそり思う。
せめて。邪魔だけはしたくない。
元には戻してやれないから。
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