不穏な空気

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花音は目を校庭に向ける。 校庭ではサッカーをしていて、大きな声とボールを蹴る音がしている。 すると、高く蹴ったボールが花音の方へ向かってくる。 誰かが走ってくる姿が見えた。 『緑川さん、今から帰り?』 和希はボールを足でキャッチしながら花音に声をかける。 『うん。今から帰り。 榊君、すごく足早いね。ビューンてあっという間だった。』 『そう?ありがとう』和希は照れながら笑う。 『あ、そうだ。ちょっと聞きたい事があるの。今いい?』 『うん。大丈夫。どうした?』 『今日のクリーンdayの砂浜に行きたい時はバスかな?』 『バスで海岸行きに乗れば直行だろうけど、なんで?』 『また行きたいなって思って。』 ただ、バスの時間は1時間に1本だから気をつけてね。と、花音に伝え和希はコートに戻る。 後ろを振り向くと花音が手を振っていたので振り返した。 『今の、花音?』 廉は戻ってきた和希に声をかける。 『今から下校だって。』 『何か話してなかった?』 『ちょっとね』 和希は意地悪そうに口許をあげる。 『えっ何だよ。』 『気になる?』 別に。と言う廉の顔は明らかに不貞腐(ふてくさ)れている。 『気にしてんじゃん。』ククッと和希は笑う。『今日の砂浜への行き方聞かれただけだよ』 『砂浜?』 『そう。学校はチャーターしたバスで行ったから行き方が電車かバスか悩んだんじゃない?』 『砂浜に何しに行くんだよ。まだ泳ぐには早いぞ』 『んー家族に見せたいとか?緑川さん海初めてって言ってたし、親もそうかもしれないしな。』 海ね。。 あの父親は行かないだろうが、もしかしたら母親に見せたいのかもしれないな。そう廉は思いボールを軽く蹴る。 『緑川さん、クラスにも話す子増えて楽しそうだよね。』 『そうだな。』 このまま、花音が学校を楽しめるといい。 笑顔になれる場所が増えるといいな。 そう廉は思いながらボールを高く蹴った。
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