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紫悠廉と榊和希。小さなコミニティーである小学校の中で知らないものはいない。
すでに2人ともに身長は170㎝を超え、廉はスポーツ万能に加えくっきりとした二重と生まれつきの少しクセがある髪質が甘いマスクを増長させている。見た目は王子様だかいつも無表情なので氷の王子様と影で言われている。
和希は成績優秀で、全国模試でも常にトップを独占。不本意だが委員長を任されている。切れ長の二重にサラサラの黒髪で少し冷たい印象もあるが、男女問わず対応は柔らく面倒見がいいため皆から頼りにされている。
そんな2人はいつも一緒に行動するため学校中の女子の視線を独占している。
『着席ー』
担任の柳田が声を張り上げる。
『皆さん、おはようございます』
『先生!転校生は?』
『まず、おはようございます。だろー。』
『おはようございますー。』
『はい、おはようございます』
『では転校生を紹介します。入ってー。』
柳田の促す声とともに1人教室に入ってくる。
スタスタと入ってくる足跡が聞き取れるほど一瞬で教室が静かになった。
先程の騒音は何一つ感じられない。
異変を感じた廉は机から重たい頭を持ち上げ正面を見た。
『緑川花音です。宜しくお願いします。』
小さくペコッと軽く頭を下げた彼女は目を伏し目がちに手を前に組んで握りしめている。
緊張してるな。
それが緑川 花音の第一印象。
顔小さいな。
手も足も小さそうだな。
その時、開けている窓から風が入り転校生の髪をゆらした。
ふわりふわりと。
触ったら柔らかそうだな。
。。。えっ。
俺今何考えた?
髪触るって何だよ。
自分が他人に興味を持った事に、驚きと気持ち悪さを感じた廉はまた頭を机に戻した。
『可愛い!』
『頭小さ!』
『お人形みたい!』
先程までの静寂はどこへやら、そこら中で男子の興奮した声がする。
『静かに!』
騒々しい雑音を担任の柳田の声が一喝する。
『緑川さんは親御さんの仕事の関係で引越してきました。今日から6ー1の仲間です。皆さん仲良くー!』
『はーい』
『えー席は紫悠の後ろ。紫悠、手を挙げて。隣が委員長の榊だから。榊、後で学校案内してあげて。ではHR始めますー』
柳田の始めますを合図に紹介は終わり、皆の視線は緑川に注がれる。
廉は頭を机につけたまま手を挙げた。
その横をふわっと彼女が通り過ぎる。
髪がゆれ、ふわりと流れる。
髪長いな。
廉は横目でチラっと彼女の姿を視界にとらえる。彼女の目は下を向いたまま、未だ手は前で組んだままだ。予想した通りの小さな手をギュと握りしめている。
『緑川さん。委員長の榊です。分からない事は何でも聞いてね』
『ありがとう』
彼女にかける和希の優しい声に何故かイラつきながら廉はまた視線を机へ戻す。
何でイラついてんだ俺。
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