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『はい!柳田です!』
『はい、はい、分かりました!え?意識がない?いえ、はい。生まれつき心臓が悪いとしか、はい。救急車お願いしていいですか?私もすぐに向かいます。病院決まり次第、連絡下さい!』
柳田が話を終えようと携帯を離そうとした瞬間、携帯を和希が取り上げた。
『もしもし!榊です!はい。そうです。緑川を榊総合クリニックに運ぶよう救急隊の方に伝えて下さい!うちの患者です!父に連絡しておくので!はい。宜しくお願いします!』
和希は柳田に『すみません』と言い携帯を渡す。
『緑川は、榊の家の病院にかかってるのか?』
『はい。心臓内科にかかるって彼女が言ってました。今から父に連絡入れます。』
和希は自分の携帯をポケットから出すと操作する。すぐに相手は出て経緯を話し始めた。
『榊のとこなら安心だな。
紫悠、先生は今から病院行くからお前達は家に帰った方がいい、』
『先生!俺も行く!』廉は叫ぶ。
『いや、親御さんも来るし、後は先生に任せてくれ。』
柳田は廉の肩に手を置きポンポンと叩く。
『先生、父から受け入れの準備をしておきます。との事です。』
『そうか、ありがとう。
紫悠、榊、2人のおかげで緑川見つかったし、絶対大丈夫だ。とりあえず、家に送って行くから帰りなさい。』
『でもっ!』廉は食い下がる。
『廉、後は大人に任せよう。俺達は邪魔になるだけだよ』
和希は廉の肩を掴む。
廉は悔しくて下を向く。
和希に行こうと促され、仕方なく柳田の後について行く。
それから柳田は廉を自宅に送り、帰っていた母親に経緯を説明して『遅くまで申し訳ありませんでした』と頭を下げて去って行った。
『廉、濡れてるから先にお風呂入りなさい。
風邪を引くわよ』
正子が廉に声をかける。
『分かった。』
『それと、書き置きぐらいして行きなさい。心配したわよ。』
正子はそう言いリビングに向かう。
花音。
無事で。
どうか無事でいて欲しい。
廉は玄関に立ち尽くしたまま、何も出来ずにいる自分の情けなさに打ちのめさながら花音の無事を祈り続けた。
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