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学校の1日は長い。
勉強に意味など見いだせない廉は1日をただぼんやりと過ごす。体育と夕方のサッカーにのみ力を注いでいると言ってもいい。
サッカークラブと言ってもわずか15人の学校のクラブだ。それでも廉は体を動かせる事に喜びを感じている。もちろん和希も一緒だ。
『和希〜先に行くぞ』
『昼休み中に行けなかった所に緑川さんを案内したらすぐに行く』
和希は彼女の方に向かい「緑川さん行こうか」と促している。
その声を聞きながら廉はスパイクを乱暴に肩にかけ早足で去ろうとした。
『榊君。私1人でぶらぶら見て回るから大丈夫だよ。ありがとう。』
明るい声で和希に応える緑川の方を横目に見ると両手を前に組んでいる。ギュと。まるで手を強く握っていないと自分を保てないように。
『大丈夫。あとは図書室だけだし、最後まで案内させて。』
そう柔らかい笑顔で和希は言うと、彼女の横に立つ。彼女の手は握られたままだ。
『図書室は2階の右端よ』
甲高い橘 芽衣の声が響く。
『委員長も色々忙しいもんね。』
『サッカーやる時間も限られてるしね』
橘の取り巻き達が矢継ぎ早に言葉を繰り出す。
早く解放しろと言わんばかりだ。
緑川はさらに手を強く握り返し下を向いた。
微妙な空気が教室に漂う。
『なぁ。お前、手 疲れない?』
橘達の声を遮るように廉はボソッと呟く。
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