216人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
『え?』
緑川は頭を上げ廉の方に視線を向ける。
『手の力抜いたら?』
廉は緑川から視線を離さずに言う。
『手?』
言われた事が理解できないような素振りをした彼女に、廉は苛立ちを抑える事ができない。未だ彼女の両手は結ばれたまま、ぼんやりした顔をしている。
廉は緑川の側に早歩きで来ると、おもむろに彼女の握りしめた両手を離しぶらぶら振り続けた。
『力入りすぎだろ』
ひとしきり振り続けた後、その手を優しく下ろす。
廉と彼女の視線が混じり合う。
緑川は『あの、その』と顔を真っ赤にし言葉を続けようとしている。
そんな彼女に視線を合わせたまま廉がふわっと笑った。
『紫悠 廉。俺の名前』
『緑川 花音です』
『ふはっ。知ってる。また明日な』そう言うと廉は教室から出た。
それを間近かで見ていた和希は、親友の僅な変化に驚いていた。
珍しいな。
あいつが自分から他人に接点もつの。
『氷の王子の笑顔、破壊力エグイっ』
『貴重だよねー!』
橘の取り巻きがはしゃいでいる中、橘は冷たい目線で緑川を見ている。
連れ出した方がいいかな。
和希は『緑川さん、とりあえず図書室まで案内するね』と彼女を教室の外に促した。
最初のコメントを投稿しよう!