出会い

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『え?』 緑川は頭を上げ廉の方に視線を向ける。 『手の力抜いたら?』 廉は緑川から視線を離さずに言う。 『手?』 言われた事が理解できないような素振りをした彼女に、廉は苛立ちを抑える事ができない。未だ彼女の両手は結ばれたまま、ぼんやりした顔をしている。 廉は緑川の側に早歩きで来ると、おもむろに彼女の握りしめた両手を離しぶらぶら振り続けた。 『力入りすぎだろ』 ひとしきり振り続けた後、その手を優しく下ろす。 廉と彼女の視線が混じり合う。 緑川は『あの、その』と顔を真っ赤にし言葉を続けようとしている。 そんな彼女に視線を合わせたまま廉がふわっと笑った。 『紫悠 廉。俺の名前』 『緑川 花音です』 『ふはっ。知ってる。また明日な』そう言うと廉は教室から出た。 それを間近かで見ていた和希は、親友の(わず)な変化に驚いていた。 珍しいな。 あいつが自分から他人に接点もつの。 『氷の王子の笑顔、破壊力エグイっ』 『貴重だよねー!』 橘の取り巻きがはしゃいでいる中、橘は冷たい目線で緑川を見ている。 連れ出した方がいいかな。 和希は『緑川さん、とりあえず図書室まで案内するね』と彼女を教室の外に促した。
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