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『ただいまー』
『廉君!おかえり!今日も王子オーラ半端ないね。そろそろうちに来ない?』
帰りそうそう出迎えに騒がしい男がいて、廉はウンザリする。
『谷崎さん、俺は写真撮られるのも自分の写真見られるのも嫌いだってば。これ何回目?諦めなよ』
諦めない!と叫びながら廉の後をついて回るこの男、名前は谷崎守 27歳 独身。
狙った獲物は逃さないをモットーにその業界では名を馳せているプロダクションのスカウトマンだ。
『廉君がうちに来てくれるなら、僕がマネージャーやるし絶対売れるよ!世界めざそうよ!』
『だから、モデルも世界も興味ないって。俺まだ小学生だし』
『何言ってんの!光る素材は若いうちに磨いて磨いてピカピカにするじゃないかー。成熟したの磨いても面白くないじゃない』
だから、磨くって何だよ。
廉はことある度に現れる谷崎にウンザリを通り越して呆れている。
こんな子供に必死になっても意味などない。
『谷崎さーん。チビはほっといていいから打ち合わせ!』
リビングから甲高い声がこだまする。
『はいはーい!愛ちゃん今行きますー』
大人の男は微塵も感じられない軽い声を出しつつササッと谷崎はリビングに向かう。
『誰がチビだよ』
『アンタ以外誰がいるのよ。チビ』
顔はまさしく天使のように可愛らしいが口を開けば毒舌全開の姉の愛が、リビングのソファーを独占してふんぞり返っている。
名前が愛って、悪の間違いだろう。
そう廉が思っているのが顔に出てるのか『喧嘩なら買うわよ』と片眉あげて廉を見ている。
『愛ちゃん。可愛らしいお顔が台無しだから負の部分は出さないように。僕はそんな所も好きだけどね』
『谷崎さん。こんな奴使い物にならないって。ただのスポーツバカだから』
愛は人差し指で廉を指す。
『いや、僕はね愛ちゃんを見つけた時も感動したけど、廉君はね神に感謝したよ。ただの綺麗な子は沢山いるけどね、廉君は違う。もうビッビッときたわけ。この子だー!って』
谷崎はそう言いつつ当時の様子に思いを馳せる。
『何ていうかなー。可愛らしい顔なのにたまに男を感じる視線というか空気をまとうんだよね。そこがまた少年から青年への移りゆく感じが何とも。ぜひ写真で切り取りたい!』
1人勝手に思いを馳せ谷崎はうっとりしている。
『いや、無理っす。すんません』廉は軽く頭を下げその場を離れた。
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