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『廉君、また来るね。懲りずに』爽やかに軽やかに谷崎は帰って行く。
今から片道2時間の帰りだ。
愛の安全性も考慮し、帰りの時間が19時をすぎる場合は毎回谷崎が送迎している。
自宅に来る度に、ああして廉に懲りずに絡んでくるのだ。
いい人ではあるけど。
愛を送ってきた場合は、必ず自宅に母か自分がいるのを確認してからでないと上がらないし来たら必ず仏壇にまず手を合わせてくれる。
何より愛を大事にしてくれてる。
廉への執着がなければ歓迎するのだが。
『廉、学校今日どうだった?』
撮影用に塗ったネイルを丁寧に落としながら何故か廉の部屋で愛は寛いでいる。
『いつもと同じ』
『いっつも同じ答えじゃない。アンタ本当に学校楽しんでる?』
廉は、和希とサッカーさえあれば他はどうでもいい。
楽しむ。
何を?
学校を?
そもそも俺は楽しんでいいのか?
『廉ー!』
愛の声で思考が遮られる。
愛は廉に向けて腕をずいっとのばす。
『何?』
『ネイル剥がして。腕疲れた』
『やだよ。やり方しらねぇし』
『これで拭いて』
そう言いつつ、除光液を含んだコットンを廉に渡す。
『愛、身長もデカいけど手もデカいんだな』
『ちょっと!女の子にデカいって失礼ね。誰と比べてんのよ。私は標準です!まぁ。身長はあるけど』
愛は身長が172cmなかなかの高身長で、未だ成長期だ。愛に言わせればモデル内では低い方らしい。
そう言えばあの転校生、手小さかったな。
そんな事を思い出しつつ愛のネイルを丁寧に落として行く。
『何?思い出し笑い?気持ち悪っ』
『愛は、体だけじゃなく態度もデカいよね』
何だと?手が使えないなら足があるんだぞ。と言わんばかりに愛の右足が廉にヒットした。
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