22.ベル様の魔法で飛んだ

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22.ベル様の魔法で飛んだ

 ベル様と蜂蜜を食べてからお風呂に入った。水なのに熱くなくて、冷たくもない。不思議な水はお湯という名前だった。お湯を溜めると、お風呂……どうして名前が変わるんだろう。  あふっと欠伸が出て、考えが中断する。丸くなって眠ろうとしたらけれど、ベル様も一緒に眠るみたい。他の木箱は起きてからでいいや。背中を優しく叩く手に促され、抱きついて眠った。  起きてすぐ、木箱に駆け寄る。上の小さな箱は蜂蜜。下は何かな? ワクワクする僕を、ベル様が魔法で招き寄せた。ふわふわと空中を飛んで、僕はベル様の腕に戻る。 「今のすごい! 飛んだみたい」 「まあ、飛んでいたな。原理は同じだろう」  お祖父ちゃん達が飛ぶ時と同じだって。これをもっと強く早く風を作り、上に乗る。今回の風はゆらゆらと揺れる動きだった。あれも楽しい。  ベル様の腕を叩いて下してもらい、走って木箱に飛び乗る。それから両手を広げて、叫んだ。 「ベル様、もう一回!」 「おいで、ウェパル」  声に重なって、またふわりと浮く。横へすっと移動した。さっきのふわふわと違う! でもこれも楽しかった。もう一回してもらおうと思ったけど、ベル様は下ろしてくれなかった。  木箱の山に近づき、上の蜂蜜を下へ移動させた。僕を飛ばしたアレと同じかな。でもシュッと動いたんだ。ふわふわじゃなくて、シュッ!  下にあった大きい木箱を、ベル様が開ける。中は……なんだろう、これ。ふわふわの白い物が入っていた。ベル様が笑って僕を下ろす。すると僕が吸い込まれた。慌てて手足を広げると、沈むのが止まる。 「ベル様、何これ」 「綿だろうな。巣材に使えるぞ、寝床が柔らかくなる」  柔らかく? 干し草より柔らかいのはわかるけど、ベッドで毎日沈んじゃうと出てくるのが大変だな。そう呟いたら、上に絨毯という布を敷くから沈まないって。それなら大丈夫かも。  ベル様に救い出してもらい、両手いっぱいに綿を運ぶ。ベル様も手伝ってくれたので、干し草は白くなった。綿は白いの。でもよく見ると、ほんのり土の色が混じってる。 「ほら」  ベル様が敷いた布の上に寝転んだ。あ、温かいし柔らかい! これはいいね。ドラゴンの皆に分けてあげようと話したら、量が足りないみたい。そうだね。お父さんやお母さんは体が大きいし、ドラゴンも家族以外にいるから。 「綿が欲しいなら、人間が持っているぞ」 「分けてくれないよね」 「俺が『頼んで』やろう」  魔王になったベル様が頼んだら、人間も大人しく綿をくれるかな。嬉しくなってありがとうとお礼を言った。綿がたくさん届いたら、獣人や吸血鬼のおじさんにも分けてあげよう。計画を話したら、たくさん貰う約束をしてくれた。  楽しみだな。にこにこしながら、次の木箱を覗き込む。こっちは丸めた棒がいっぱい……これは薄い布で、人間が洋服を作る時に使うみたい。また食べ物じゃなかった。最後の箱は食べ物だといいな。
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