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「あなたを愛しています!
魔王を倒す旅に、私もお連れください!」
大人しい彼女が、切羽詰まった声で口にしたのは、必死な願いだった。
俺は物陰で一人、暗い顔をした。
彼女は互いの一族が決めた許嫁。結婚して子供を産むことが使命だ。国を出る旅など許されない。
たとえ俺よりイリセに心を奪われていても。
同じことを、イリセが辛そうな顔でソフィアに諭していた。彼もわかっているのだ。
俺はその場を去ろうとした。最後にソフィアの横顔をちらりと見る。
彼女の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちたところだった。
ふと、思いついたことがあった。
――もし、婚約が解消されればどうだろう?
俺がいなくなれば、彼女の願いは叶うのでは。
王位も兄が継ぐ。母も幼い頃に亡くし、着る物もふるまいも妻も、何もかも道筋が決まった人生。
だが、失態を犯して国から消えたら誰も追ってこない。
自由になれる。
そして、王族はエルフ族の姫に謝罪する。そこでソフィアが、イリセと旅に出る許可を求めれば――。
それはソフィアと俺自身を救う、妙案に思えた。
そして俺はやり遂げた。
イリセとの決闘で負け、卑怯な手を使ったと噂を流し、婚約解消。周囲からの非難は凄まじいものがあり、さすがに辛かった。全く違う表情を向けられるようになった。しかし二人のためにも後にはひけなかった。
俺は城を抜け出して身を隠し、港で適当な船に乗り込んだ。
難破したのは予想外だったが、こうして新しい人生を手に入れた。未練はない。
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