二人の女神

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 妹女神は語って聞かせた。  クロエがだいぶ前から糾弾された王子のことを気にしていたこと。酷い事を言われても婚約者のために耐えて国を去ったリヒトを見て、彼を助けたくなったことも。 「……あいつ、本当はいい奴だったってわけ」 「どうなんでしょうね。セレイス国に少なからず迷惑かかっただろうし」  妹女神は「どうぞ」と手で示し、姉に紅茶を勧めた。芳醇な香りがあたりに(ただよ)い、姉はためらいつつも席につく。 「お姉様お気に入りのイリセはまっすぐ魔王を倒しに向かっているわ。でも魔王の影響で苦しんでる民はあらゆる国にいる」 「……」 「ざまぁされた少年と異世界からの転移者が本筋とは別にそこそこ活躍する――そんな外伝みたいな物語があってもいいんじゃない?」 「……」  姉女神は紅茶を飲み干し、カップを置いた。  しばらく無言で考えていたが、水晶玉に手をかざす。きらめく光がクロエに「治癒魔法成長率アップ」の能力を授ける。 「あら、お優しいこと」 「うっさいわね!女神の気まぐれってやつよ!」  姉女神は(きびす)を返した。 「自分の神殿に帰る!」 「ゆっくりしていけばいいのにぃ」 「ここにいるとあんたのダラダラがうつりそうなのよ!  私異世界から転生させた100人の管理しなきゃいけないんだから!  最近ほっとくとスローライフに走る奴が多くて、魔王との決戦に人手足りてないのよ!」  姉は身振り手振りを交えながら強く語った。対して、妹はまた「ふぁあ」とあくびをする。 「じゃあ、がんばってー」  妹女神はヒラヒラと手を振って見送った。    水晶玉の中では、リトとクロエが楽しげに歩いている。東の町に向けて出発したようだ。 「クロエ、あなたの物語じっくり楽しませてもらうわね」  女神は少女の笑顔を見て微笑んだ。
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