16人が本棚に入れています
本棚に追加
水晶玉からは様々な国、様々な人達を見ることができた。
そして私は、リヒト=ヴァインシュテール……リトを見つけた。
優しすぎて、悪役になってまで許嫁の恋を守った人。船が難破して、浜辺に流れ着いて。
彼を見るうち、こみ上げてくるものがあった。
――あの人の、力になりたい。
私は、書庫で女神様が眠った隙にバルコニーから飛び出し、人の姿で村へと降り立っていた。
村外れで倒れていた彼を、人の住んでいない小屋に運んだ。私は村に合った服装になっていたし、村人達は私に何も聞かず、食事の作り方や地理を教えてくれた。あれは女神様の御加護だったのかなと、今にして思う。
リヒトはリトと名乗り、日に日に元気になっていった。私は神殿と村を行き来した。
時折、怖くなった。彼は今、私の保護が必要だ。でもいつか村を出ていくかもしれない。私を必要としなくなるかも……。
だから、リトが私を必要としてくれて、旅に誘ってくれて、心から嬉しかった。生きる力が湧いてきたのを感じた。
この人となら、大丈夫。
生きていこう、この世界で。
空を見上げた。太陽はまぶしく、神殿は見えない。
それでも、女神様がどこかで見守ってくれている気がした。
最初のコメントを投稿しよう!