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少年の覚醒
遠くから、村の男が叫んだ。
「リトー! そっち行ったぞー!」
「任せろ!」
大トカゲが地響きを上げ、俺に向かってくる。
ケァァ! と威嚇する声が響き、周囲のヤシの木が揺れる。大人三人を一度に飲み込めそうな大きな赤い口、鋭い牙。
敵の進路に俺は立ちふさがる。両足を踏ん張り、指先に魔力を集中させる。
「黄金の嚆矢!」
雷の魔法が放たれ、大トカゲの口から尾まで抜ける。一瞬遅れて電撃が全身を包み、巨体は叫び声をあげ、白目をむいて倒れた。
「やったな!リト!」
村の男たちが駆けてくる。
漂着して1週間後。クロエの献身的な看護と治癒魔法のおかげで、体はかなり回復した。上級魔法が使えることで魔物討伐に重宝され、俺は村に溶け込み始めていた。
その場で大トカゲを解体し、男達と村に運ぶ。
「最近大トカゲがよく出るな」
「リトのおかげで、被害がなくなって助かるよ」
「魔王の影響で魔物がどこも増えているらしい。魔王を倒すためにセレイス国の勇者が旅立ったそうだが」
「こんな村まで来ないだろう」
「東の町はもっとひどいそうだ。自衛団も魔物に押され気味らしい」
それなら、村を出てそこに行くのもいいかな、と俺は考えた。行くあてもないし、人助けして回るのも悪くない。
「肉の一番おいしいところをリトにあげよう。
あの子と食べるといい」
「ああ、ありがとう」
村の集落が見えてきた。
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