第一話『ゴーストバスター幽野怜』

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【1】  日本の都道府県に属する、とある一県。  その一県の山の奥に、その男の根城はあった。  根城とは言っても、ただの廃校舎なのだが。  山をずーっと登り、草を掻き分け、軽自動車が通れるか通れないか分からない細道を走った先に、その廃校舎はある。  この立地条件は、「小学校を立てる場所じゃないだろう」と思いたくなる程、悪い。  かつては山の子供達が通っていたらしいが、少子化の影響から随分と昔に廃校となった、抜け殻のような場所にその男は住んでいた。  電気も付かない、その男以外誰もいない、真っ暗闇の校舎を根城としていた。  当然、そんな気味の悪い場所を寝床としているその男は、只者ではない。……というか、廃校舎を根城としているだけで変人だ。  正直、気味が悪い。  しかし、立地条件が最悪であり、電気も付かない、そして住んでいるのは気味の悪い男――そんな場所に、よく人が集まるのだ。  多くの人が。  これは不思議でも何でもない。  何故なら、その気味の悪い男を、頼りにして、人々はこの場所へとやって来るのだ。  頼りに――助けて欲しいから……  それもその筈、何故ならその気味の悪い男は――  ゴーストバスターなのだから。
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