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【2】
夜の山奥に明かりが灯る。
車のライトだ。
その車はタクシーであり、一人の女性を乗せている。
「ここで停まってください」
女性がそう言うと、タクシーの運転手は車を停止させる。
「こんな山奥で降りるのですか?」
「はい……」
「自殺ですか? それとも……」
「自殺なんてしませんよ。私は……生きる為にここに来たんです」
「なるほど、あそこの主にご相談に来たんですね。上手く行く事を祈っております」
タクシーの運転手はそう言いながら、廃校舎に目を向ける。女性は笑って「はい、ありがとうございます」と頷いた。
タクシーが去り。女性は自分の足で歩き始める。
ゴクリと唾を飲み込み、廃校舎の入り口の扉を開いた。
真っ暗闇の中、使われている筈のない下駄箱が並んでいる。蜘蛛の巣だらけだ。ホコリも積もるに積もっている。
「……本当に、こんな所にいるの?」
疑いつつも、彼女は歩を進める。
先程のタクシーの運転手は言った。あそこの主、と……つまり、あのタクシー運転手はここまで人を運んで来る事に慣れているのだ。
慣れている……即ち、ここにその人物がいる事の証明と言っても差し支えない。
彼女は歩く、その人物がいるという……保健室へ。
「確か保健室は一階廊下の突き当たりって……」
真っ暗なので、視界が悪い。そんな中、壁をつたってゆっくりと歩く女性。
そして歩いていると、明るい光が灯る一部屋を発見した。
『保健室』――そう書かれてある。
「ここに……噂の人が……いる……」
女性は、保健室の扉を軽くノックする。
「ご……ゴーストバスターさん、いますか……? 」
…………返事は帰って来ない。
「……いないんですか? 助けて欲しいんです……」
返事が返って来ない事に青ざめる女性。
あの噂はガセだったのか?
そんな絶望感が女性を襲う。
「嘘でしょ!? せっかくこんな山奥まで来たのに!
お願いします!! 私を助けてください!! いるんでしょう!? 私にはもう、時間がないの!!」
保健室の扉を力一杯ノックし続ける女性。その目には涙が浮かんでいる。
「お願い……だからあ……」
しかし、力尽きたのかへたり込む女性。
諦めかけた……その時。
ぺたぺたと、足音が聞こえる。
「え?」
絶望の中、下を向いていた女性が顔を上げ、足音の方へ視線を向ける。
視線の先には――
「ありゃ、お客さん来てたんだー、留守にしちゃってたねー、ごめんごめん」
全裸の男がいた。
パンツの一つも身に付けていない、全裸男がいた。
変態がいた。
女性は顔を真っ赤にして「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
と、叫んだのだった。
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