第一話『ゴーストバスター幽野怜』

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【7】  黄金の光――龍の爪に見えた何かが消えたと同時に、再び周囲は漆黒の闇に包まれた。  しかし、数端や友人の表情は明るかった。  彼らは命を救われたからだ。  目の前の……少年に。  ゴーストバスターの少年に。 「にひひ、終わったよー。良かったね」 「はい! ありがとうございます!」 「それにー、友達も無事で良かったねー。あ、無事ではないかー、一週間も霊の中でいたんだもんねー、一応検査してもらっとくー? 知り合いに腕の立つ専門医がいるんだー」 「ぜ、是非お願いします! 良かったね! 友人!」 「……ああ……」  二人して手を繋ぎ、喜び合う。両者の目には涙。  無事、この悪夢は終わったんだ――と。 「さーて、それじゃあ現世に帰ろっかー、いつまでも地獄にいたんじゃ死んでるのと同じだしー……と、言いたい所だけど……ちょっとここで待っててー」  怜は歩き出す。 「は、はい……でも、どこへ?」 「んー? ちょっと情報収集しに行ってくるー……あ、この件とは別件だから、気にしないでー」  怜が向かった先は、老婆のような手の残骸が残る場所。  いや、残骸ではまだない、まだかろうじて息があった。 「やっほー、即死しないように打ち込んだ筈だから生きてるよねー? ちょっと聞きたい事があるんだけどー、答える事出来るー?」  少しずつ体が消えていっている老婆のような手は返答する。 「マサカ……キサマホドノオオモノガアラワレルトハ……ワタシモツイテイナイ……」 「喋れるみたいだねー? だったらとっとと質問しちゃうねー?」 「……シツモン……?」 「金色に光る幽霊を知らない?」  言葉に詰まる、老婆のような手。 「キンイロ……? キンイロニヒカルノハ、キサマノ……アア、ナルホド、ソウイウコトカ……ナルホドナァ……」  何かに気付いたのか、ニヤァと汚い笑みを浮かべる。 「気持ち悪く笑ってる暇があるならさっさと答えてー、早くしないと君死んじゃうからさー。少なくともソイツ、100年前には日本にいた筈なんだけどー、何か噂話とか聞いた事ない?」 「ヒャッヒャッヒャッヒャ……ウワサモナニモ、ソノオカタハ、ワレワレニトッテ、アコガレトモイエルカタのヒトリダ……ヒャッヒャッヒャッヒャ! キサマ……ワタシガ、ツタエタトコロデドウスルツモリダ? ソノオカタヲ……」 「ん? ぶっ潰すつもりでいるけどー?」  怜の発言を聞いた途端、突如大きな声で笑い始める老婆のような手。 「ヒャッヒャッヒャッヒャヒャッヒャッヒャッヒャヒャーッヒャッヒャッヒャ!! オモシロイ! ジツニヒャクテンマンテンノカイトウダァ!! ヨモヤキサマ――  レイオウノナカノレイオウニケンカヲウルツモリトハナ!! ヒャッヒャッヒャッヒャ!!」 「うるさいなー、で、そのレイオウノナカノレイオウって奴の事、何か知ってるー? 知らないなら、早くくたばって」 「シッテイル……ト、イッタラ……?」 「……!! 本当に知ってるの!? 教えろ! 奴は今どこにいる!! どこで眠っているの!?」 「ヒャッヒャッヒャッヒャ……メノイロガカワッタナ、ソレガキサマノホンショウカ……タイソウナカメンヲカブッテイルナァ、ヒャッヒャッヒャッヒャ……」 「良いから答えろ!!」 「ヒャッヒャッヒャ……ワタシニカッタ、ニクタラシイキサマニゴホウビトシテオシエテヤロウ……アノカタノイバショマデハシラナイ、ダガシカシ――  アノカタハ……マチガイナク、チカイウチニメザメルデアロウ……」  死にかけの老婆のような手は続ける。 「ソシテアノカタガメザメタトキ――  ニンゲンカイハオワル。  ヒャッヒャッヒャッヒャ! ソレヲミトドケラレナイノガザンネンダ……ソノトキ、キサマガドンナカオヲスルノカ……ヒャッヒャッヒャッヒャ……ミテミタカッタ」 「きっとその時は、その光る幽霊をぶっ潰して、満面の笑みを浮かべているよ……絶対ね」 「ヒャッヒャッヒャッヒャ……オット、サスガニモウジカンガナイミタイダ……ソレデハサイゴニワタシカラヒトコト、コレヲイイノコスコトニスルヨ……ヒャッヒャッヒャッヒャ――  キサマノオモウミライハ、ヒャクパーセントアリエナイ」 「…………!」 「ソレデハマタ、ジコクデアォゥ……」  そう言い残し、老婆のような手は消え去った。  死に絶えた。 「……ホント……しぶとい幽霊だったねー…………さ、あの二人の元に戻ろっかー」  そして――  二人の元に戻った怜は、呆気なく、いとも簡単に、地獄から現世へと帰って行ったのであった。
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