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「この後、どこ行きます? 東側の海も行ってみます? 水上バイクとかできるらしいですよ」
「……行かない」
「えー、じゃあ、レンタカーで北の方行ってみます? なんかガイドブックに景色良いところがあるって書いてあったな」
ダメだ。
常夏の島で何もせず過ごすという俺の目的は、全く理解されていない。
事前に言ったはずなのだが、小野にとっては初めての異国の地だからか、やはり観光を存分に楽しみたいのだろう。
割れた腹筋を見せつけるかのように堂々と座る海パン姿のコイツは、持て余したエネルギーで伸びをしながらゆっくりと砂浜に背中を沈める。
そして俺を下からのぞき込むようにして、イタズラっぽく笑った。
「しょうがないなぁ。今日はマヒロさんに付き合いますよ」
やっと俺の沈黙を正しく受け取ってくれたようだ。しかし、元々この旅行は俺が一人で計画していたもので、小野は勝手に付いてきただけ。この文脈はおかしい。
だが言及したところで、陽のオーラで丸め込まれるだけだろう。再び横になり、黙って目を閉じた。
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