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終わらない夏を求めてこの島へ来るのは4回目。今までと違うのは、隣に恋人がいること。
大学4年、今年は最後の夏休みだった。
しばらくぼうっとしていると、砂浜の熱さと自分の体温が混ざりあっていく。背中から吸い上げた熱は体内を巡り、地面へ還元される。
その作業を繰り返しているうちに、自分がこの海の一部になったかのような感覚になる。その感覚に揺られ、心地よく浸る。
大丈夫。あの嫌な記憶は思い起こされない。夏が終わりに近付くとやってくる、あの日の記憶。
だから俺は、終わらない夏へ逃げた。
初めて来たのは、大学1年の夏休みだった。関東の猛暑がピークを越えた時、無性に耐え難い喪失感に襲われたのをよく覚えている。
幸い、大学が始まるのは9月の中旬。それまで、この季節の移り変わりから逃げ切ろうと思い立ったのだ。
それから毎年同じ時期にここに来ている。
こんなこと、学生のうちにしかできない。だから今年は最後になるだろう。
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