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この島に来てから、1週間が経った。事件もなければ、土産話になるような出来事もない。
初日はあんなにはしゃぎ倒していた小野だが、何もせずのんびり過ごすだけの日々に楽しみを見出してきたらしい。
椅子にもたれ、トロピカルな果実の盛り合わせを食べながらネットフリックスを楽しんでいる様は、板についている。
俺たちは、ホテルの屋上にあるちょっとしたダイニングスペースに来ていた。ラウンジと表記されていたが、それにしては高級感はなく、簡素な椅子とテーブル、そして人をダメにするタイプのクッションが置かれているだけ。
俺はそのクッションに身体を預け、星を眺めていた。
他に客はおらず、小野が見ている映画の効果音が静かに響く。
別に星がすごく綺麗に見えるわけじゃない。空港に近いこの町は夜も騒がしく、人工の明かりが輝かしく生きている。
ただなんとなく、日本で見る星と違う気がするという感想が頭を渦巻いているだけ。天体に詳しくはないので、眺めたところでどこがどう違うかはわからない。かといって調べる気にもならない。スマホは部屋に置いてきたので、今は調べる手段すらないが。
「マヒロさん、寝ちゃった?」
映画が終わったのか、音がプツリと止む。
「起きてるよ」
ビーチサンダルがペタペタとこちらに近付く。
「星見てるんですか?」
そう言って小野は俺のクッションに乗り込んできた。
一人用のクッションからバランスを崩す。床が芝生ならいいのだが、残念ながらコンクリートだ。落ちるわけにはいかない。
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