7年前

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7年前

「それでは直哉の内定を祝しまして、かんぱーい!」 「おめでとー」 「いや、ありがたいけど、なんで祝われる側の俺が料理担当なんだよ」 「だって直哉くんの家のキッチンだしー、私たちが勝手に使うのも悪いしー」 「じゃあ宏樹の家で良かっただろ」 「俺ん家八人も入らないし……てか、果南ちゃんいつにも増してテンション低くね? どうかした?」  突然名前を呼ばれて驚く。まずい、完全にボーッとしていた。  各人各様の、総じて言えば気遣わしげな表情を浮かべたサークル仲間たちに「そんなことないよ」と言ってお茶を濁す。  ややあって、宏樹くんがふーんと返す。そして何事もなかったかのように始まる直哉くんの内定お祝い鍋パーティー。私が辛気臭いのは今に始まったことじゃないし、皆必要以上の関心は示さないようだ。  今は正直、その無関心さに救われる。  あの夜。涼太くんと後味悪い別れ方をして以来、私は笑顔が上手に作れなくなった。  当時高校三年生だからもう四年も前の話だ。それでもこの時期になると、嫌でも思い出す。思春期の失恋がこんなに尾を引くものだとは知らなかった。  先月は別の仲間のお祝いだった。私も、もう三ヶ月前には地元の中小企業に就職を決めている。ついこの前大学受験を終えたと思ったら、息吐く間も無く次なる人生の帰路。  心はまだ、あの夜に立ち止まったままだというのに。  彼は今頃どこで何をしてるんだろう。
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