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「でさぁ、〇〇と××の初デートが〜」
「そういえば先週△△も別れたじゃん?」
「卒業前に、□□に告ろうかなぁ……」
同じコミュニティに所属しているはずなのに私だけ何も知らない恋バナ。すっかり蚊帳の外の状況でも、込み上げるのは疎外感などではなく、涼太くんへの燃え残ったろうそくのような想いばかりだ。
本当に未練がましくて嫌になる。逃げるように、一人何度も鍋へと手を伸ばす。
「果南ちゃんは? 今好きな人とか居ないの?」
「え、私?」
お玉を持った手が空中で止まる。
話しかけてきたのはまたもや宏樹くんだ。なぜか興味津々といった様子の彼と、彼に見えない角度でさっさと答えろと言外の圧をかけてくる女子陣。
「いないよ」となんとか絞り出せば、「宏樹くんは好きな人居ないのー?」と彼女らは話を本筋へと戻してゆく。
嫌だな。荒唐無稽な妄想話にもとりあえず一回乗ってくれるような人は、きっとここには居ない。
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宴もたけなわに近づいた頃、家主の直哉くんがおもむろにテレビを付けた。
最新の音楽をランキング形式で発表する番組が流れる。普段音楽を聴かない私には縁遠いがおそらく結構人気の番組だ。
今はランキングの合間、「話題沸騰アーティスト特集」なるものをやっている。
「あー、この人知ってる! エモいよねー!」
誰かが言ったが、私の耳には入らなかった。画面に踊るその名前に、全身の器官が釘付けになっていた。
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