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現在
「良い歌だよな、太陽のお歌。日向も好きかい?」
「うん! ひなもすき!」
「そうかそうか。じゃあ我が家は皆、陽川涼太さんの大ファンだな」
そう言って娘の頭を撫でる直哉くんは、あの頃とは違いもうすっかり父の顔だ。その姿に、思わずニコニコと笑みがこぼれる。
こうやって幸せを噛み締める瞬間、私はいつも涼太くんを思い出し『太陽の唄』を口ずさむ。
あの時、テレビでこの歌が流れなければ。
それが涼太くんの真意かはもう確かめようがないけど、直哉くんが涼太くんの「笑っていてほしい」という想いを汲み取り、私に伝えてくれなければ。
きっと私は永遠に、本当の笑顔を失ったままだっただろう。
そして思う。あぁ、やっぱり涼太くんは太陽だった。
だって貴方は沈んだ後も、世界中のどこかの誰かを、遺した歌の力で照らし続けている。
もちろん、私も。
「いっしょにうたう! おとーさん、おかーさん!」
「お、いいねぇ。じゃあ最初からいくぞ? せーのっ」
ありがとう、涼太くん。お空まで届くように歌うから、ずっと見守っててね。
窓の外にはいつのまにか太陽のようなお月様が浮かんでいる。私たちは三人揃って、笑顔で、大きく息を吸った。
「どうもこんばーんは 僕の名前は太ー陽ー」
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