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13年前
満月の夜、近所の公園。ブランコを漕ぎながら私は泣いていた。一漕ぎするたびに涙が散り、地面に小さな斑点を作ってゆく。
高校生にもなってブランコなんて人目が気になるところではあるが、幸い今はお月様しか見ていない。
堂々と好きなだけ漕げる。好きなだけ、涙を流せる。
どれくらいそうしていただろう。五分ぐらいかもしれないし、一時間かもしれない。突然、隣のブランコがギコッと揺れた。
「君、泣いてるの?」
驚いて隣を見ると誰かが座っていた。慌てて足でブランコにブレーキをかける。
公園なんてとても不釣り合いな、同い年ぐらいの男の子だった。
暗くてはっきりとは分からないけどおそらく整った顔立ちに、フワフワの茶髪。そして暗くても分かる、雪のような白肌。
闇の中にぼんやりと浮くその肌のせいか、まるで彼の周りだけ昼間のように明るく見える。
「俺で良ければ、話聞くよ?」
普通こんな時間、しかも一人でいる時に声をかけられたら年頃の女としては逃げるのが正解だろう。だけど彼の見た目や優しい声色は、不思議なほど私に警戒心を抱かせなかった。
気付けば、ぽつりぽつりと話始めていた。
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