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「お母さんが死んじゃったの。病気で」
「……そっか」
「ついこの間まで、すぐそこに見える病院に入院していたのに」
「翠山病院?」
「うん。死んじゃったばかりの頃は実感がなかったけど、こうやって病院を眺めてたら、どんどん悲しくなってきて。もうあそこに、お母さんは居ないんだって」
「……」
「私まだ、親孝行なんて何も!」
それ以上は言葉を継げず、両手で顔を覆い声を上げて泣いた。
男の子は何も言わなかった。あまりにも静かなものだから呆れて帰っちゃったのかと思い、そのまま結構長いこと泣いた後で顔を上げたら、彼がまだそこに居て驚いた。
「落ち着いた?」
撫でるような声で尋ねられ、私は鼻を啜りながら辛うじて頷いた。
「大好きだったんだね。こんなに泣いてもらえて、お母さんも天国で喜んでるよ」
「そう、なのかな」
「うん。君の気持ちはきっとお空まで届いてる。それだけで十分親孝行だと思うな」
なかなかにクサい台詞が飛び出してこっちの方が照れ臭くなる。一方男の子は完全に素で言っているようで、まるで照れた様子はない。
「けど、もっと親孝行する方法はね、」と彼は続ける。
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