12年前

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「え?」 「夜しか会えないってことは、昼は太陽なのかなって」 「すごい飛躍だね」 「そう? 沈んだ後にこうやって人の姿に化けてるんだとすれば、説明つくでしょ?」 「えっと、化けるって何のために?」 「うーん……あっ、分かった! お月様に会うためだ! だってほら、太陽と月って同時に空に居られないし、会ったことないはずだから!  だからどうしてもお月様に会いたくなった涼太くんは、こうして満月の夜人型に化けて」 「くっ……ふっ、ふふふっ」  口元を押さえてプルプル震える涼太くんの姿に、私は初めて自分がすごく恥ずかしいことを言っていたと気が付いた。 「ちっ、違うの! これは冗談で」 「果南って、意外とロマンチストなんだね」  顔から火が出そうなほど熱くなる。涼太くんが何でも受け止めてくれるからって、ついとんでもない妄想を披露してしまった。  羞恥で顔を上げられずにいると、ようやく笑い終えた涼太くんが口を開く。 「残念だけど、俺は太陽じゃないよ。太陽はここで沈んだ後も別のどこかで昇り、誰かを照らしてるでしょ? 俺が本物の太陽だとしたら、こんなところに居る暇はないんじゃないかな」 「そ、そっか。そうだよね」  突飛な妄想話にも何言ってんの?と根っこから否定するのではなく、乗っかった上でやんわり違うよと教えてくれる涼太くん。そんなところが好きだなぁと思う。  ……好き? いやいや、まさか。  自分で自分にツッコミを入れていると、涼太くんが上から爆弾発言を投下してきた。 「ロマンチスト、俺は好きだよ」  何も言えず沈黙した私に、彼はからかうでもなく目を細めた。  そんな真っすぐなところも学校で会う他の男の子たちとは全く違って見え、やっぱり、好きだなぁと思った。
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