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いつも輝いていた目の前の太陽が、にわかに曇った。
「あー、それは……ごめん。無理なんだ」
明確な拒絶の言葉。浮かれていた私はその瞬間、ようやく自分の立場を思い出した。
月に一回、満月の夜にお喋りするだけの関係。
太陽のように華やかな涼太くんに対し、私は人の目を引く容姿も明るい性格も持ち合わせていない。ただ、あの日泣いていた私を優しい彼が憐れみ、それがズルズルと続いただけ。また会いたいと言ったのも私だ。
そう思ったら、今までずっと迷惑をかけていたんじゃないかと不安になった。不安になったら、一秒でもこの場に居ることが耐えられなくなった。
「ご、ごめんね調子に乗っちゃって……恥ずかしいなぁ、あはは」
慌ててジャングルジムから降り、駆け出した背中に涼太くんの声が縋ってきた気がしたけど、掠れ過ぎていてよく聞こえなかった。
あるいは色ボケした脳が生み出した都合の良い幻聴のような気もして、怖くて振り返れなかった。
✳︎✳︎✳︎
家に帰った後、私は酷く反省した。
恋愛対象として見られてなくてショックだったとはいえ、さすがにさっきのは失礼過ぎた。
ロマンチストなところを好きと言ってくれた涼太くん。最初こそ私からまた会いたいと誘ったけど、その次もと言ってくれたのは彼だ。それにこの二年、彼がくれた笑顔。言葉。
冷静に考えて、迷惑と思われていたはずがない。少なくとも良好な友達関係ではあったはずだ。
……謝ろう。次会った時にこの前はごめんって謝って、もし許してもらえたら、これからも今まで通り友達でいよう。
そう決めて、その日はなんとか眠りについた。
しかしあの満月の夜以降、涼太くんが公園に現れることは二度となかった。
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