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「あんた、バカじゃないの」と言い出しそうになったけれど、舌が動くところをどうにかこらえた。
むしろ、このときのためにショウイチが一日中走り回ってくれていたと思うと、胸がじんわり温かくなってきた。
「やるの?二人だけで」
「ああ、やる」
「子どもだけの花火って、危ないんだよ?」
「お前、今日は親の監視をくぐって来たんだろ?もう引き返せないぜ。僕らは今晩だけは世界一の悪ガキコンビだ」
「ガキって何よ。女の子に向かって」
二人で笑った。一緒に笑うと、胸もポカポカしてきた。
そうだ、僕らはこの夜限りは世界一の悪ガキたちだ。うるさい親の言いつけを破って、中学生二人で夜遊びまでして。
あの目障りなくらいに明るい街、大人たちの世界を見下ろすこの丘の上は、今晩限りの二人だけの世界。
宇宙を埋め尽くす星々にも、神様にも、誰にも二人の邪魔をすることはできない。
「じゃ、始めようぜ」
「うん」
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