7月29日

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 雨はだいぶ弱まった。  枝から落ちた雫がトタンの屋根を打つ音が、シンとした空気を震わせる。木に括り付けられた、誰が作ったのかもわからないブランコが、キイキイ揺れる音さえ耳につく。  「昨日の夜、パパとママで相談して、そう決まったの」  「…台風が通り過ぎてからじゃ、だめなのか」  「道路の状態が悪くなるだろうから、その前に」  「いつ出発するんだ」  「明々後日の朝はやく」    「家具の片付けなんかもあるんだろ?そんなに予定を切り上げて、間に合うのか」  「うち、引っ越しが多いから、家具が少ないんだよね。すぐに準備が終わるように」    「…、!………。」  ショウイチは、もしかしたら、家族だけが先に出発して、カホはあとから合流すれば、夏休みの間だけは一緒にいられるんじゃないかと考えた。  「あたしも次の学校の手続きがあるし、荷解きも手伝うから、家族と一緒に行かなきゃだめなの」    甘い希望は全部打ち砕かれた。ショウイチの中の、なにか大事なものが溶け落ちて、ぐるぐる回る渦の中に投げ込まれてしまったようだ。  どうして引き止められないんだろう。カホはここにいて、言葉を交わしているのに。気だるげな目を見つめることだってできるのに。  カホの心は何万光年も宇宙の彼方にあって、手を伸ばしても触れられる気がしない。  たった一人の友達と一緒にいたい。そんな簡単な願いを、神様はどうして叶えてくれないんだろう。  一緒にいたい。  そんな自分の願いもカホを悲しませ、苦しめるだけなんじゃないか。そんなの結局、自分のわがままなんじゃないだろうか。    
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