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点火方法はシンプルだ。お互いに火付け棒を手に持って、林側の端からショウイチが。街側の端からカホが、一つずつロケットに点火していく。
一つ、二つ、三つ…合計で六つのロケットに火をつけたところで、二人はスピードを上げる。ロケットの数は十三個。最後の一つを打ち上げるのは、どちらか一人。
四つ、五つ、六つ…サンダルの音の間隔が短くなる。
そして二人は同時に十三個目にたどり着いた。
どちらが灯すか。取り合い。譲り合い。
結論はすぐに出た。
「「一緒に」」
二人が手にした二本の棒。その火種を、火薬へつながる縄へと渡した。縄が縮み、カウントダウンが始まる。
「離れろ!走れ!」
「あっ」
ショウイチはまるでバクダンにでも点火したかのように、その場から駆け出した。
点火式の花火は「付けたら離れる」のが鉄則。ささやかな余韻を味わう間もなく、カホも弾かれたようにあとについて駆け出す。
が、二人とも悪ガキとしての罰が当たった。履きなれないサンダルに足がもつれて、まずショウイチが転ぶ。続けてカホも。
だだっ広い草原の胸元に顔からダイブ。勢い余って足が持ち上がり、アザラシのマネ…。
「「うへえ…」」
この丘は不思議なところだ。ここへ来てからの二人は、本当に心の底までシンクロしていた。
一緒に走る。一緒に転ぶ。ちょっと気分が下がって、能面のような表情で起き上がる。
そうしてやっぱり一緒に声を漏らした。
目に入ってきたその光景。
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