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「これって…」
「好き、なんだろ?なかなか見つからなくて、一日かかっちまった」
夏休みが始まってから今日までカホが着ていたオレンジの花の柄のワンピース。
カホは自分の服と髪飾りを見比べてから、静かに受け取った。
ショウイチがこれを探して一日…?ショウイチの顔を見る。やけに真面目な顔だと思ったけれど、そうじゃない。ほどけそうになるのを必死で真一文字に結んだ口もと。これは「照れ」を隠している顔だ。カホは思わず吹き出した。
「あんた、バカじゃないのっ!?」
ショウイチの顔は沸騰寸前だ。でも、あのときとは違う。終業式の日、体育館の裏でカホに向けられた冷ややかな視線は、もうどこにもない。
混ざりっ気なしの笑顔でカホはショウイチを見つめた。
「でも…ありがとう」
そうつぶやいて、笑顔で泣いた。
ショウイチも、顔が割れても構わないくらいに強引に笑って、泣いた。
ショウイチはもう迷わなかった。
自分はやっぱりカホが好きなんだって、すこし恥ずかしくたって、この世界のど真ん中で何度でも叫べる。
「僕、お前が…カホがずっと好きだ。…今も」
「もう、このタイミングで言う!?」
カホの手の中の髪飾りに、ひとすじのしずくが瞬く。
それがこの夜、二人の間に咲いた最後の花だった。
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