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10月末 エピローグ「あの子」
"あの子"が引っ越してから、もうすぐ二ヶ月。
クラスのみんなも先生たちも、長袖に衣替えを済ませている。
ショウイチは相変わらず、休み時間になれば一人で学校の中をふらついている。行くあてなんてない。水を飲むわけでも、トイレに行くわけでも。そして本当の意味で誰に会うわけでもなくなった。
階段の踊り場にも、体育館の裏側にも、あの子の姿はどこにもなかった。
今日もやっと、息苦しい学校から開放された。ショウイチは部活などやっていないので、まっすぐ家に帰る。
帰っていた。今までは。
あの夏休み以来、ついつい寄り道をしてしまう。
あの子が住んでいた家。二ヶ月前、列島に上陸した台風は各地で甚大な被害をもたらした。
それはこの土地でも同じで、川に近いこの一帯では数件、床が浸水した家があった。あの子がいた、あの家も。
復興が進んだ今は川沿いに大きな防波堤の建設が進んでいて、災害対策が強化されている。
「災害に強い町」なんて看板まで立てて、行政も必死なようだ。
空っぽになったあの家には、半月前に子連れの家族が移り住んできて、賑やかに暮らしている。
前の住人なんて、初めからいなかったとでも言うように、ごく当たり前の幸せな日々を送っている。
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