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「何でここに……?」
私は疲れて幻覚でも見ているのだろうか。
「んー、旅行?」
「は?」
「当たったんだよ」
「何が?」
「福引き。商店街とかであるじゃん、ガラガラーってするやつ。それで、旅行券当たった」
「は?」
「行き先はお楽しみですーの、ミステリーツアーとかいうやつ。目的地はまさかの、ここでしたー。あはは」
「えっ、どうやって来たの?」
なぜ私は普通に会話をしているのだろう。6年前に死んだはずの彼と、6年前と変わらないノリで。
「う、馬の精霊? に乗ってきた」
「……精霊馬? なわけないよね。まだお盆じゃないし。そもそも……いやいや……」
「茜何独り言言ってんの? 大丈夫?」
「何か……間違いました。失礼しました」
私は一度屋上から出た。そして、もう一度扉を開けた。あなたがこんなところに居るわけが……居た。また、居た。
「ぎゃー! もう、何!?」
「そのリアクション、さっき欲しかったんだけど。相変わらず茜は冷静沈黙なんだから」
扉の向こうは確かに屋上で、そこに居たのも確かに彼だった。何も、間違っていなかった――。
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