虎穴13 大物な小虎

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 彪翔と三人で本家へ帰ると、  上がり框で彪雅がそわそわしながら待っていた。 「おかえり伊織。彪翔もよく来たな」  そう言って、彪雅は彪翔の頬にそっと触れた。 「彪雅さん、可愛いでしょう?」 「そうだな…」  爺虎夫婦がなかなか彪翔から離れないので、焦れた彪仁が怒鳴る。 「おい、伊織が疲れるだろう。早く退け!」 「ああ、すまん」  ようやく屋敷に戻った伊織たちだった。  彪雅の部屋には、ベビーベッドがあった。 「あの…」 「ああ、あれ?ここだけじゃなくて、伊織ちゃんの部屋と、彪仁の部屋、食堂にも。あとは…」  翠は、伊織の動線上のあちこちに、ベビーベッドを設置した。 「伊織ちゃん、私もそうだったけど、子育てはここでしなさい。ここには沢山の人手があるから」 「いいんですか?実は、少し不安だったんです。お言葉に甘えてもいいでしょうか?」 「もちろん。伊織ちゃんはよく分かってるから心配ないけど、不安は尽きないもんね。利用できるものは利用して?」 「ありがとうございます、お母さん」  こうして、伊織たちは子育てのため、しばらく本家で過ごすことになった。  彪翔は、おとなしいというより、肝の据わった子供だった。  たくさんの大人たちにも物おじせず、意思表示をはっきりと示した。  それでも、母親の伊織には甘えたで、  彪仁といる時は、特にべったりと張り付いていた。 「彪翔、伊織は俺のものだからな?」 「もう、彪仁さん。張り合いすぎです」  伊織は窘めるが、伊織の腕の中の彪翔は、  明らかに彪仁を挑発するような視線を向けていた。 「伊織、彪翔は…」 「彪仁さん」  伊織は尚も食い下がる彪仁を嗜め、 「彪翔。今日は、ばばのところにお泊りだよ」  そう言うと、伊織は彪仁を残し、彪翔と一緒に部屋を出ていった。  しばらくして、一人で戻ってきた伊織は、そのまま立ち尽くしている彪仁に歩み寄り、その腕で彪仁をくるりと囲った。 「彪仁さん、心配しなくても大丈夫ですよ?たとえ彪翔が狙ってるとしても、すでに根底からありえませんから」  そう言って、彪仁の耳元に唇を寄せて、 「私はすでに、彪仁さんのものですからね?」  伊織はそう囁き、そのまま彪仁に擦り寄った。 □◆□◆□◆□  伊織は、彪翔を連れて翠たちの部屋へとやって来た。 「お母さん、伊織です」 「はーい」  翠がすぐに顔を出す。 「すみません。今日彪翔を預かってもらえますか?」 「いいわよ。彪仁が爆発した?」 「はい。彪翔と張り合ってしまって…」 「全く…。橘の男どもはみんな一緒ね」 「…?」 「彪雅さんも同じだったってこと。まぁ…彪仁と私の関係は少し違ったけどね…。彪翔はこっちで預かるから、彪仁のケアをしてあげなさい」 「はい、お願いします。おやすみなさい、お母さん」 「おやすみ。彪翔、ママにおやすみーって」  彪翔は、伊織にキリッとした視線を向け、見送った。  部屋に戻る道すがら、伊織は、困ったものだと考えながら、  彪仁の機嫌をどうやって直そうか考えながら、  彪仁の待つ部屋へ戻っていったのだった。
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