虎穴06 虎達の猛追

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 彪仁は、伊織を横抱きにして浴室に連れていく。 「わっ」  ふわっと身体が浮き、伊織は思わず彪仁に抱きついた。  事前に伊織が、お風呂の準備を済ませているのは分かっていたので、そのまま二人でやってきた。浴室に到着すると、その場に伊織を下ろす。 「あの、彪仁さんっ」  ここまで来ても、なお抵抗する伊織を、彪仁はぎゅっと抱きしめた。 「伊織、今日はもう我慢は無理。やっと堕ちてきた伊織を前に、理性も欠片も残ってない。だから諦めて、俺に愛されろ」  色気を駄々洩れにされながら、耳元で甘く囁かれると、  伊織の意思とは関係なく、身体が彪仁を求めて疼きだす。  彪仁の欲情の乗った瞳が伊織を射抜き、噛みつくようなキスが降ってきた。  着ている服に手が伸びてくる。  その手を伊織は必死に止めた。 「…んっ、彪仁さんっ、……ん、待って…っ」 「待てない。諦めろと言ってる、伊織」  結局、伊織はそのまま浴室へ連行され、散々翻弄される。  とことん抵抗する伊織を彪仁は、徹底的に思考を削ぎ蕩かした。  気づいたら彪仁の部屋のキングベッドの上で、互いに何も纏わぬ状態。  伊織は、シーツに縫い留められて、彪仁に組み敷かれていた。  伊織は、もう抵抗する気もなかった。  初めて見る、彪仁の美しい肢体。  何度か抱きしめられて、意外とがっちりしてるなとは思っていたが、  こうしてまじまじと見ると、引き締まった体に、割れた腹筋。  虎は、見惚れるほど美しかった。  思わず両手で彪仁の頬を包み込むと、虎の瞳が柔らかく緩む。 「彪仁さん」 「どうした」 「彪仁さん…」 「ん、伊織」  伊織の瞳にみるみる涙が溜まる。  そして、堪えきれなくなった雫は、  するりと伊織の頬を濡らす。 「……どうしよう…彪仁さんが、どうしようもなく…」  その先を声に出すことが出来なかった。  伊織の溢れる感情を、彪仁は静かに受け止めた。 「伊織、お前が好きだ。狂おしいほどに。やっとこの手に抱ける。もう離さない」  彪仁は、伊織にそう囁き、優しくキスを落とした。  互いに舌を絡ませ合い、舌と舌でキスをする。  伊織の体から僅かに香る、甘い香りが彪仁を誘い『雄』を煽っていく。 「伊織、いい匂いがする」 「…そうですか?私には分かりません」  そう言われ、彪仁は伊織の首筋に顔を埋め、  深呼吸をするように息を吸い込んだ。 「……っ」  伊織は、それだけで肌が粟立った。 「敏感だな、伊織」 「……すみません…久しぶりなので…」  伊織がそう答えると、  彪仁に、耳を食まれながら囁かれる。 「どのくらい?」 「…っん、もう年単位かも…」  くちゅっと耳を舐められて、  首筋をするすると下りて来る。 「分かった。ならゆっくり解そう。いきなりヤると、傷になるからな」  そう言って首元の、先程から伊織が反応する場所を甘噛みした。 「…っゃ、…っん」  伊織の体が震える。  虎はまさに猫。あちこちを甘咬みしてきた。 「……ぁ」  久しぶりに抱かれる身体は、全身が、歓喜に震えるかのように反応し、  全くコントロールが効かなかった。
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