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彪仁は、伊織を横抱きにして浴室に連れていく。
「わっ」
ふわっと身体が浮き、伊織は思わず彪仁に抱きついた。
事前に伊織が、お風呂の準備を済ませているのは分かっていたので、そのまま二人でやってきた。浴室に到着すると、その場に伊織を下ろす。
「あの、彪仁さんっ」
ここまで来ても、なお抵抗する伊織を、彪仁はぎゅっと抱きしめた。
「伊織、今日はもう我慢は無理。やっと堕ちてきた伊織を前に、理性も欠片も残ってない。だから諦めて、俺に愛されろ」
色気を駄々洩れにされながら、耳元で甘く囁かれると、
伊織の意思とは関係なく、身体が彪仁を求めて疼きだす。
彪仁の欲情の乗った瞳が伊織を射抜き、噛みつくようなキスが降ってきた。
着ている服に手が伸びてくる。
その手を伊織は必死に止めた。
「…んっ、彪仁さんっ、……ん、待って…っ」
「待てない。諦めろと言ってる、伊織」
結局、伊織はそのまま浴室へ連行され、散々翻弄される。
とことん抵抗する伊織を彪仁は、徹底的に思考を削ぎ蕩かした。
気づいたら彪仁の部屋のキングベッドの上で、互いに何も纏わぬ状態。
伊織は、シーツに縫い留められて、彪仁に組み敷かれていた。
伊織は、もう抵抗する気もなかった。
初めて見る、彪仁の美しい肢体。
何度か抱きしめられて、意外とがっちりしてるなとは思っていたが、
こうしてまじまじと見ると、引き締まった体に、割れた腹筋。
虎は、見惚れるほど美しかった。
思わず両手で彪仁の頬を包み込むと、虎の瞳が柔らかく緩む。
「彪仁さん」
「どうした」
「彪仁さん…」
「ん、伊織」
伊織の瞳にみるみる涙が溜まる。
そして、堪えきれなくなった雫は、
するりと伊織の頬を濡らす。
「……どうしよう…彪仁さんが、どうしようもなく…」
その先を声に出すことが出来なかった。
伊織の溢れる感情を、彪仁は静かに受け止めた。
「伊織、お前が好きだ。狂おしいほどに。やっとこの手に抱ける。もう離さない」
彪仁は、伊織にそう囁き、優しくキスを落とした。
互いに舌を絡ませ合い、舌と舌でキスをする。
伊織の体から僅かに香る、甘い香りが彪仁を誘い『雄』を煽っていく。
「伊織、いい匂いがする」
「…そうですか?私には分かりません」
そう言われ、彪仁は伊織の首筋に顔を埋め、
深呼吸をするように息を吸い込んだ。
「……っ」
伊織は、それだけで肌が粟立った。
「敏感だな、伊織」
「……すみません…久しぶりなので…」
伊織がそう答えると、
彪仁に、耳を食まれながら囁かれる。
「どのくらい?」
「…っん、もう年単位かも…」
くちゅっと耳を舐められて、
首筋をするすると下りて来る。
「分かった。ならゆっくり解そう。いきなりヤると、傷になるからな」
そう言って首元の、先程から伊織が反応する場所を甘噛みした。
「…っゃ、…っん」
伊織の体が震える。
虎はまさに猫。あちこちを甘咬みしてきた。
「……ぁ」
久しぶりに抱かれる身体は、全身が、歓喜に震えるかのように反応し、
全くコントロールが効かなかった。
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