虎穴07 獲物の抵抗

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 買い出しを終えて、キッチンに向かう。 「彪仁さん、少し待っててくださいね」 「ああ、俺も残りの仕事をあげる」  念のため、ご飯は出かける前に仕込んでいたので、  今は、後ろでいい匂いをたてながら、炊飯ジャーが働いている。  肉じゃが、サバの味噌煮、豚ロースの冷しゃぶサラダ、  わかめにじゃことごまを合わせたものと、大根のつま。  その上に、魚の切り身ブロックを数種類、お刺身にひく。  シシャモに衣をつけてフリッターを作り、最後に、枝豆を解凍した。 「彪仁さん、出来ました。キリがいいところで…」 「ああ、大丈夫だ。食おう」  今日は、作った料理が大皿ですべて、真ん中に並んだ。 「酒盛りなので、好きなものをちびちびやって下さい。あ、ご飯もありますけど、食べますか?」 「もらう」  伊織は、ごはんと、グラスに氷、  業務用の酎ハイの素と炭酸水を並べた。 「彪仁さんは何を飲みますか?ビールも日本酒もワインも、ひと通り準備しましたけど?」 「伊織と一緒でいい」 「私、酎ハイ一択ですけど、いいですか?」 「大丈夫だ」 「あと、さきいかなんかの乾物もありますので、おつまみ足りなければ」 「充分だ」  カラカラと氷とグラスがぶつかる。 「酎ハイの素は、業務用を買ってきました。いつもは、ストロング缶を買ってるんですけど、やっぱり自分で作るのが一番美味しいので」  炭酸で割り、マドラーでかき混ぜて、出来上がったグラスを彪仁に渡す。 「とりあえず、私の配合です。薄い濃いは言ってください」 「大丈夫だ」  カチンとグラスを合わせて、二人の酒宴の開宴が始まった。  きゅーっと、伊織がグラスの酒を一気に煽る。 「っはぁっ、久しぶりだ。美味し」 「伊織は、いつもこんな酒盛りしてたのか?」  並ぶ料理を見て、彪仁が尋ねてくる。  伊織は、手に持ったグラスをぐびっと煽って、 「まさか。私、仕事で散々料理してたじゃないですか。終わる頃には、見てお腹いっぱいなんです。だから、いつもスーパーの見切の惣菜でした」 「……」 「彪仁さんと暮らしだしてからです。こんな普通に、食事を摂るようになったのは。昔は、朝は米を流し込んで、昼は食べてなかったな…。夜はそんなかんじで」 「…俺より不摂生だな」 「そうですね。仕事で作る分、自分の事は無頓着でしたね。やっぱり、食事のは大事だなーって、しみじみ思います。最近、身体の調子がすこぶるいいんです」 「そうか」  そう言いながら伊織は、あっという間に1杯目を開けて、  カラカラと、2杯目を作りだす。 「伊織、すきっ腹だろう。何か腹に入れろ」 「あ、いつもの癖で…。すみません」  そう言いながら、グラスを片手に、肉じゃがのジャガイモを口に入れた。 「もっとゆっくり飲め」 「大丈夫です。久しぶりだけど私、『ザル』を通り越して『ワク』ですから」  そう言って、二杯目の酎ハイを豪快に流し込んだ。 「………っっっくぅ、堪んない」 「…」  豪快に酒を煽る伊織は、飲ん兵衛のオヤジのように言葉を吐く。  そして、飲むアルコールの度数の濃さ、飲むスピードは相当で、  彪仁も若干引き気味の、かなりの酒豪だった。
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