夜空に夏が散る

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夜空に夏が散る

「決めた。来年の夏までに彼女作る」  夏休みも終盤の8月下旬。  突然思い立ったようにそう決意を固めると、幼馴染の大和(やまと)が、こちらに視線を向けながら、公園の蛇口を捻る。 「何。急に」 「俺、気づいちゃったんだよ……」  夏休み入ってからほとんどの時間を大和と過ごしてきた。地元の祭行ったり、海行ったり、話題の映画観たり、夏休みの特番見てグダったり。それはそれは充実した毎日を送って、非常に楽しかった。ただひとつを除いては……。 「華がないっ!!!ちっとも華がないんだよ!!!」  嘆く俺に対し、大和は「華ねぇ」とあまりしっくり来て無さそうな返答をしながら、並々に水が注がれたバケツを持ち上げた。 「俺らもう高2だよ!? このままじゃ花の男子高校生という短い青春時代が終わっちまう!!」  夏休みも終わり、という事で近所の公園で花火をしに来ているのだけど、こんな時にもし、お互いに彼女が居たら…。どれだけ輝かしい青春なのでしょうか。  力説するも、大和はやっぱりあまりピンと来ない様子だった。
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