夜空に夏が散る

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「涼太、好きな子でもいんの?」  大和の質問にはたとする。 「いや。居ないけど」 「じゃあどうやって彼女作んの?」  そこまで考えて居なかった俺は押し黙った。大和は「詰めが甘いなぁ」と笑う。 「てか! 大和は彼女なんで作らないんだよ」  この大和という男は、それはそれは女からモテる。学校では特別目立つ訳でもないのだけど、その寡黙さと冷静さ、そして何より端正な顔立ちで目を奪われる女子はたくさん居るし、ひっそり告白されている事も知っている。  でも、俺が知る限り、大和に彼女が居た試しがない。 「好きな人居るから」 「え!!? 大和好きな子いんの!? だれだれ!!俺の知ってる子!?」  思わぬ返答に食いつくと、大和は地面にバケツを置いてから、俺の手からビニール袋を取った。  ビニールから手持ち花火の袋を取り出し、手際よく封を開けながら「知ってる子」と伏せ目がちに答えた。 ーー知ってる子ってことは、同じ学校の子か? 全然気づかなかった。  黙々と考えていると花火をひとつ渡され、俺はそれを無意識に受け取った。 「あっつ!!!!」  手元に熱が伝わるタイプの手持ち花火を知らず知らずのうちに受け取っていたことに気づき、声を上げると大和は「ボーッとしてるから〜」とイタズラに笑って見せた。
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