名前で呼んでほしい

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名前で呼んでほしい

家が有名な大企業でも、裕福な家な訳でもない。 でも、何故か婚約者がいる。 和菓子屋の一人娘が、何故有名製菓メーカーの一人息子の婚約者になったのか。 それは、始めはどちらも小さな和菓子屋だったから。 私の婚約者の祖父にあたる人が経営の才能があって、会社を大きくした。 でも、昔から仲の良かった両家は孫同士を婚約させた。 「あの・・・塩見(しおみ)さん。婚約破棄していいんですよ?」 「絶対しないよ」 祖父同士の仲が良くても、私たちはそこまで話したこともない。 でも、たまに食事に誘われては一緒に外食に出かける。 「えっと、今日はお仕事だったんですよね?疲れてませんか?」 「今、疲れが取れた」 「え?」 「冬奈(ふゆな)と話したから」 塩見さんは一切顔色を変えずにそう言った。 全然話したことがないのに、私のことを好きとは思えない。 でも、何故か甘い言葉をいつも投げかけてくる。
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