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「可愛い・・・可愛すぎる・・・」
成紀さんが何か呟いている。
そして、急に顔を上げた。
「冬奈、今度の休みにどこかへ出かけないか?」
「いいですけど・・・せっかくのお休みなんじゃ・・・」
「冬奈と過ごす以上に有意義な使い方はない」
成紀さんが当たり前のことみたいにそう言った。
「冬奈は行きたいところがある?」
「あ、えっと・・・」
「素直に言ってくれ」
「今週末は隣の県で和菓子フェスタがやってて・・・」
「じゃあ、そこに行こうか。車で行くから、朝迎えに来る」
「いいんですか?」
「もちろん。冬奈と出かけられるなら、心の底からどこでも楽しいよ」
成紀さんは和菓子を受け取って、嬉しそうに帰っていった。
形だけの婚約者なのに、何故あんなに良くしてくれるのだろう?
優しすぎる言葉には甘さも含まれていて、まるで本当に私のことが好きみたいな・・・
私は頭をブンブンと振った。
そんな訳ない。
だって、お互い小さい頃から知ってるけど、婚約が決まるまで本当に会うのはたまにしかなかった。
それに大企業の一人息子と小さな和菓子屋の一人娘じゃ立場が違いすぎる。
勘違いしちゃ駄目、私は自分に言い聞かせた。
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