9人が本棚に入れています
本棚に追加
なんでもすぐに忘れてしまうじいちゃんはかわいそうなのか?
怒られたことまで全部忘れてしまうから、幸せなのか?
大好きだった高校野球も、もう理解できなくなったのはかわいそうなのか?
でも、毎日行きたいくらい魅力的な『じいちゃん的夢の国』に週4も通っているから幸せなのか?
いや、毎日行きたいのに半分しか行けないから、もしかしたらかわいそうなのかもしれない。
それも忘れちゃうから大丈夫なのか?
家族に1つずつ全部声かけをしてもらわないと朝の支度ができないから、かわいそうなのか?
声をかけてもらって見守られていれば、自分で自分のことができるから幸せなのか?
俺はいつものように、みさきに相談してみることにした。この家では俺と似た立場だけど、俺より4年長く生きてるからいろいろ頼りになるのだ。
「あー、とっしー。それはね、両方であってどちらでもないんだよ」
みさきの奴、なに言ってんだ? 俺は混乱した。
いつもちょっとおかしい姉が今日は更におかしくなったのか?
それとも、俺の聞き間違いか?
あと『とっしー』と呼ぶのもそろそろやめてほしい。俺の名前は智だぞ。それにもう中学2年生なのだ。
でもまあ、とりあえず気を取り直して、言い分を聞いてみることにした。
「どういうこと?」
「いいのか悪いのか、よくわからないことはいっぱいあるけど、どっかに決めなくてもいいんじゃないかな」
何やらニヤつきながら良いこと言ってる感じを醸し出そうとしているが、やっぱり意味がわからん。思わず気の抜けた声が出る。
「はあ」
「考えるのは良いことだよ。少年!」
みさきは偉そうなことを言って、部屋を出ていってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!