白でも黒でもなく、グレーでもないもの

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そもそも、認知症のじいちゃんはかわいそうなのか? 介護をしている俺たちは大変なのか? YESかNOの2択なら、答えは迷わずNOだ。 じいちゃんは、毎日楽しそうだ。ばあちゃんに怒られても、みさきに無理矢理歯ブラシを持たされても、居間を出る度に母さんに後をつけられても、いつも笑ってる。 俺たちも大騒ぎしながら、笑ってるじいちゃんの面倒をみるのは当たり前だと思ってる。 「うひょひょ」「うほっ」「げへへへへ」 じいちゃんの独特の笑い声は、聞くとイラッとすることもあるけど、つい一緒に笑っちゃう時もある。 じゃあ、じいちゃんは幸せなのか? わーわー騒ぎながら、皆で協力できている俺たちは楽なのか? それもやっぱりNOだ。 じいちゃんは1日中、家族に見張られて一挙手一投足監視されている。 そして、すぐに怒られる。 「鼻かんだティッシュはポケットに入れていかん!」 「風呂に入ったらパンツは新しいのに履き替えるよ~。扉を一度閉めるから、その間にこっちに履き替えてねー」 「トイレに行ったら手を洗います」 もちろん、注意する方だって骨が折れるに決まっている。 ところで、なんで俺がこんなことを考え始めたかというと、ばあちゃんが嘆いていたからだ。 「友達が『あなたんとこのお父さんは歩けるし、トイレも自分で行けるからいいがね。お嫁さんやお孫さんも、よう面倒みてくれるんでしょう。楽だがね』っていうのよ!? 自分のご主人は認知症でもなんでもないのに! いっぺん、うちのお父さんの面倒みてみればいいんだわ!」
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