プロローグ RJNO

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 神奈川県横須賀市船越町  日本の海を守る東の拠点として、明治期より軍港の街として栄えてきた横須賀。その一角たる船越に一際目立つ白い庁舎がある。正面玄関の巨大なルーフと、最上部中央に錨と桜の代紋を掲げた「海上作戦センター」と呼ばれる施設である。同センターには自衛艦隊司令部、護衛艦隊、潜水艦隊、掃海隊群、海洋業務・対潜支援群、艦隊情報群等の海上自衛隊の6つの司令部が集約された、重要拠点である。その一室に怒号が響いた。 「このクソアマがァ!!!!いつかホンマに殺したるからな!!!!!!」  もう何度も見た光景であるし、吼えるヘッシュには正直同意でしか無いのだが、眼前の相手はよくまぁ怒らないものだと毎回思うのであった。 「怒るのは勝手ですが、貴方方に課せられた任務が無くなる訳ではないのですよ。怒りに身を任せてエネルギーを浪費するのは勝手ですが、準備だけはお忘れなく」 「お前ホンマに覚えとけよコラ!!!!!!」 「ヘッシュ、帰るよ!!飯行こう飯!!銀だこ行こう!!失礼しました!!」 「あんなたこ焼きもどき食わす気かコラ!!!戦争や戦争!!!!」  ブチ切れるヘッシュを宥めつつ、部屋から連れ出した。廊下の一部の幹部が何事かという目でこちらを見るが、殆どの者は「またか」という反応あるいは一瞥もくれない。完全に日常光景の一部と化していた。  静寂が部屋に戻った時、ヘッシュの怒りの矛先だった相手が窓からゲートへ向かう2人を見送っていた。自衛隊の挙装容儀上、本当は違反だが、茶色混じりの長いポニーテール、外見は20代後半ぐらいにしか見えない、美形と呼ばれる部類のWAVE(女性海上自衛官)であるが、袖の4本の金線が圧倒的ヒエラルキーの上位である事を指し示していた。彼女は東 恵美(アヅマ メグミ)1等海佐。彼ら2人の直属上司である。    
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