プロローグ RJNO

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同日 日本国埼玉県航空自衛隊入間基地 2輸空隊入間ターミナル 『次のニュースです。緊張状態の続くバルカン半島ですがー』  情報収集中と書かれた札を置かれたテレビの画面に連日報道されるバルカン半島の情勢のニュースが流れていた。この組織はおかしなもので、勤務中であっても「情報収集」の名目でテレビが常時つけられていた。一応サボりではない。NHKなんかは災害時の情報拡散が非常に早く、民間リソースの情報として指揮情報判断を容易にする上でバカに出来ないものである。それ故、業務に支障の出ない範囲で皆目を通していた。  ニュースは気分が沈む物が大半だった。バルカン半島S国軍により、殆ど軍備の無いM国国境付近の村にてジェノサイドが発生していた。  元々一つの連邦国家であったS国とM国であるが、連邦崩壊後、S国内部に蔓延る領土拡張主義により、S民属がかつて居住していた土地全てを併合しようとする動きが国レベルで生じていた。表向きとしてはS国の国策ではなかったが、実態としてはS国指導者から民族主義者への多額の支援が行われている。やがてS国民族主義が発端となった紛争は国境を面する全ての国へ広がった。そんなある日、軍備を持たない小国、N国に対し越境したS国民族主義者のテロによりN国政府が事実上崩壊、同日、N民族に対するジェノサイドにより、老若男女問わぬ600名もの民間人が犠牲となる。その中には日本人4名が含まれていた。  N国には邦人30名が未だ取り残されており、政府はRJNO(在外邦人の保護等及び輸送)を自衛隊に下令した。  エプロンにはシロナガスクジラを連想させる航空自衛隊の大型輸送機、C-2が既に待機している。機内には陸上自衛隊中央即応連隊(CRR)を始めとする陸空自衛隊の部隊、外務省職員が乗り込んでいた。その中に2名、自衛隊の物とは似つかわしくない緑を基調とした戦闘服に身を包んだ男達が居た。 「ID」 「なし」 「ネーム」 「なし」 「その他ID」 「なし」 「やる気」 「なし」 「あの女は?」 「帰ったらシバく」 「オッケー行こうや」 「了解」  出発前の“儀式”を済ませ、シートのベルトを締める。  エンジン音が高鳴り、機体はバルカン半島へと旅立つ態勢に入った。    
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